フランス在住★高齢出産女の社会時評

現地の生活者ならではの内容、しかし、ただ生活しているだけではない観察眼が売り

フランスで歯医者に行く

今日は生活の話。フランスで歯医者にかかった話です。

 

海外生活で一番不安になるのは、医療でしょうね。言語のバリアで医者とのコミュニケーションがもちろん不安ですが、そもそも制度自体が根本的に異なっているので、事務的な面で何をどうしてよいのか分からないことが多いように思います。フランスでもそうではないでしょうか。特にお子さんを抱えた生活者ならなおさら。例えば3年程度の海外赴任期間中、一度も病院のお世話にならない子どもはいないでしょう。

さて、今日は歯医者の話。虫歯など何十年とかかっていなかったのに、最近奥歯に大きな虫歯がありました。なんか最近お茶がシミるなあ~と思って、鏡を見たら奥歯に巨大な穴が! 加齢や妊娠で虫歯になりやすくなっていたのでしょう。やってしまった、とは思ったものの、その時は事の重大性を認識していませんでした。

 

1.診察は予約制

日本でも歯科医は予約制のところが多いと思いますが、フランスでは内科医(medecin généraliste)と呼ばれる町医者も含めて、基本は予約制。以前はいちいち電話して予約するのが普通で、すぐに空きのあるところが見つからなったりで本当に不便でした。最近では、ネットでの予約プラットフォームが発達して本当に便利になりました。

こちら↓

https://www.doctolib.fr/

これによって医療秘書の職が将来にわたって大量に奪われたと思います。が、医療機関情報情弱の外国人にとっては本当に朗報!予約可能な日時、時間帯、健康保険証(Carte vitale)のネットワークに接続しているか(していれば医療費の払い戻しが自動になる)、受け付けている支払い方法(カードで払えるか)、そして何よりも、その医者や医療機関が社会保障協定を結んでいる(Conventioné)か、料金はいくらぐらいかが一発で分かってしまうようになったのです。

料金は、医師が社会保障協定の第1セクターか第2セクターかなどで全然違うのです。以前は事前に調べずに行って、毎回お会計時にドキドキしていたものですが、今は始めから分かっているので、本当に気が楽になりましたよ。

妊婦のエコーも腰痛時のレントゲンも、コンタクトレンズの処方箋もこのプラットフォーム一つでOK。本当に革命です。医師の卒業校や話す言語まで公開されております。

 

2.問題はお値段だが・・・

さて今回も、この方法で近所で一番早く空きがある歯医者さんをすぐに予約していきました。予約するときの診療理由の選択は、「応急(urgence dentaire)」を選びました。

結果的に、時間に正確で、診療所も清潔、よい女性の医師でした。根元に近いとことろ虫歯ができて、神経に到達していたので、二つの奥歯の神経を抜くことにはなりました。ショックでしたが、何とか抜歯は免れた安堵感といったら。最初の応急措置から、3カ月くらいで終了。セラミックボンドクラウンを二本被せました。

この修復治療に2000€(およそ30万円)。改めて文字にすると高え(汗)。フランスでも強制加入の最低限の医療保険では、セラミックは入れられません。しかし、最終的にほとんどが「ミュチュエル」と呼ばれる医療保険の二階建て部分による払い戻し対象となりました。自分で数百ユーロは負担しましたが、結果的にそれで収まってラッキーという気持ちでした。

もちろんいくらが自己負担分になるか最後まで分からないというわけではなく、歯科医からの見積もり(Devis)をミュチュエルにオンラインで送るとすぐに返答があり、いくら出してくれるか教えてくれるのです。治療を続けるかどうかは、この回答を見てから医師に伝えればよいのです。ここから安くやってくれる、違う治療法をとる医師を探すのもありでしょう。

 

3.ミュチュエル加入の必要性

実を言うと、この医療保険の二階建て部分に、会社員の場合、会社が加入させるのが義務ですが、職種によっては結構入っていない人がいます。私も単なる怠慢で手続きしていなかったのですが、第2子出産直前に加入。産院での個室部屋代がタダになるなど、その威力を実感していたところです。さらにこの歯冠の払い戻し率がよかたので、本当に入っておいたよかったと思いました。子どもたちの医療費も自己負担分が発生することはなくなりました。

当然ですが、払い戻し率がよいミュチュエルは保険料も高いです。でもフランス生活では必須ですね。勤めている人なら会社で加入しているはず、そうでない人はできるなら配偶者のミュチュエルに自分や子どもたちと加入しましょう。

日本では診療費は、「一律3割自己負担」のように大変シンプルです。フランスでは、診療の種類、医者の種類、かかりつけ医がいるかいないかで変わってくるので非常にややこしくなっております。例えば、かかりつけ医(medecin traitant)を申告していないと、払い戻し率が非常に悪くなるのです。決まった医者が診るようにすることで、医療費の抑制を狙っているんですよね? いまいち分かっておりません。

 

珍しく生活情報でした。では、また。

イエメン戦争とフランス製の武器、そして調査報道の意義

ノートルダム火災でかすれてしまいましたが、4月15日、フランスがサウジやUAEに売った武器がイエメン戦争でどうやって使われているかを示す軍事機密文書がリークされています。
https://www.ccijf.asso.fr/ja/news-france-hebdo/5682-actu-france-2019-04-17-01

フランス政府はサウジに売った武器が、防衛に使われているときいてるか、空爆には使われていないと説明していたようですが、この文書と衛星画像などから、攻撃や空爆に使われ、民間人の犠牲者を出していることが暴かれ、政府の言ったことが真っ向から否定されております。

これを出したのは、フリーや報道機関のジャーナリストなどから構成される、調査報道専門を専門とするWEBベースのメディアで、その名もDisclose。寄付から成り立つ独立した非営利の組織であります。
https://made-in-france.disclose.ngo/en

ちなみに、購読料だけから成り立つwebメディアMediapart(設立者はルモンド紙出身)も、調査報道に強くスクープ連発して好調な様子。フランスメディア界には変化が訪れていますね。

フランスのマクロン大統領はトランプ大統領と比べると、国際協調主義の擁護者のイメージがありますけれども、彼はフランス軍需産業の「営業」でもあります。そして、サウジは大事な「お客様」です。フランスは世界第3位の武器輸出国でサウジはそのお客さんとして第6位です。今回、イエメン戦争で攻撃用途で使われている武器を作っていたのは事実上の国営企業ネクスターです。

ドイツが、サウジへの武器輸出を停止した時もフランスはいい顔をしませんでした。
https://mainichi.jp/articles/20181026/k00/00m/030/090000c

 「専守防衛でお願いします」、と言って通用する国ではななさそうだよね、サウジ。問題の機密文書も、”一度売っちゃったら使い方までは分かりませ~ん”、と白状しているようだ。

気になるのは、このwebメディアの創設者が、国内治安総局の呼び出しを受けているということ。また、内部通報者の保護は軍事機密の保護には該当しないともサイトには書いてあります。メディア側はもちろんリークの公益性を強調していますが、報道の自由、ソースの秘匿、内部通報者の保護がどうなるか。これによってイエメン戦争へのフランスの関与について、議論が起きるか。

国際政治の舞台でいい顔しつつ、リビアやシリアをひどい状態にしたフランスの二枚舌が今までずっと気になっていた。調査報道で気を吐くフランスのジャーナリストたち。頑張ってほしい。

 

いまさら、香取慎吾さんパリ個展

今さらな話ですが、 パリで9月に行われていた元SMAPの香取慎吾さんの個展。 初日に行ってきました。 香取さんもいらっしゃっていました。


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他のメディアが伝えている通り、 草彅剛さんや稲垣吾郎さんもいらっしゃっていたそうです。二人は、私が 「野村萬斎もみたし、もういっかな、帰ろう」 っと思って帰ったあとにきたみたい(涙)。 90年代前半から草彅さんの魅力に気づいて、 草彅さんが推しメンだった私にとっては、残念でした。


香取さんの個展については、大手の新聞などが「ルーブルで個展! 」と大々的に報じ、これに対する批判も起きていたようですね。 そもそもジャニーズタブーのあるテレビ局などはほとんど報じていないでしょう。


http://art-culture.world/ articles/liar-katori-shingo-i- have-a-solo-exhibition-in-the- louvre-museum/


で、この批判。確かに個展は、 お客さんがお金を払って見るルーブル美術館の展示スペースの中ではなく、 ルーブル美術館に併設されているショッピングセンターのホールで開催されていました。これを「ルーブル美術館で個展」と言ったら、誇張が入っているのは間違いないですね。


個展開催後に、フランス語で検索かけてみましけど、 特にフランスのメディアで話題になってる様子もないですね。 日本関係のサイトがフランス語で情報を出しているのはありますけど、 評論家による批評とかはまったく検索にひっかかりませんでした。


でも、普通そんなもんでしょう。そんな話題になる人って、 そうそういない。

「ルーブル」の名前を使って、 香取さんを大々的に日本向けに逆輸入する、 これで目的は達成されてるのですからね。 さすが元マネージャーは剛腕ですよね。「剛腕」 の字面とは程遠い、華奢で上品な雰囲気の方でした。


ちなみに香取さんの作品、私は嫌いではなかったです。静香の絵よりは、少なくともずっとよいのでは。


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マクロン大統領の貧困政策

「金持ちの大統領」の汚名返上?

前回、所得の再分配について書いたところで、ちょうどフランス政府の「貧困対策プラン」が発表されました。最近人気が微妙なマクロン大統領。金持ち大統領」の汚名を払しょくしたいのでしょう。事の重大さも分かっているのでしょう。マクロン大統領自身が発表しました。​

 

子どもの貧困

​貧困対策の第一の柱は、「子ども」に置かれています。フランスでは3歳から無料の公立幼稚園に通うことができますが、それまでの間、子どもたちは、保育園やベビーシッター、親が見るなどの方法で保育されます。貧しい家庭の子が保育園に預けられている率(5%)は、裕福な子(22%)に比べて低く、それには貧しい地域には保育園が少ないなどの理由があるようです。学校である幼稚園とは違い、保育園は無料ではありません。今回のプランでは、保育園の拡充とともに、親が職業教育や求職活動を行う間に子どもを預けることができる保育園を増やすこと、妊娠4か月から保育料援助を前払いすることなどが提案されています。​

 

貧しい子供に朝食を

その他には以下のようなものが目玉施策となっています。​

ー小学校で朝食を出すこと​

ー収入に応じた給食料金を拡大し、1食1ユーロ(約130円)から食べられるようにすること​

ー18歳までの義務教育​

格差は社会の活力を損なう

大統領はこの施策を紹介する演説の中で、貧困が「幼少時から人の人生の軌跡を決め、早くから才能、野望、夢を破壊してしまう」と述べています。大統領はこのように貧困によって人生が決定づけられ、何世代にもわたって継承されてしまうことを「最悪のスキャンダル」と呼んでいます。同大統領は、生粋の経済リベラルと思われ、大統領選時には自身を「社会主義者ではない」と述べて物議を醸しました(社会党政権の閣僚であったにもかかわらず)。近年では、労働組合の力を大胆にそぎ、解雇をしやすくする労働法改革を率いたことも記憶に新しいところです。その時には「金持ちの大統領」とさんざんに揶揄もされました。彼は、左翼ではありません。しかし、固定的な格差が才能の開化を妨げ、社会の活力をそぎ、経済的にもプラスでないことを分かっているのでしょう。さすがですね。洗練されたネオリベラルのお手本みたいな人です(誉め言葉です)。​

 

新自由主義版ベーシックインカム? ​

そして、注意が必要と思われるのが、一種の”ベーシックインカム”ではないかと思われる最低所得保障の創設です(2020年に法律を予定)。所得が一定以下になったらすべての人が同じ条件で受け取れる手当です。現存する住宅手当や生活保護などの手当を一つに統合するのだそうです。そしてこの援助は、就業支援なので、これを受け取る場合は職安が提案する就職を拒否できなくなることになりそうです。”ベーシックインカム”にもいろいろありますが、自助を中心に置いた、非常にネオリベラルらしい”ベーシックインカム”ですね。一貫しています。​

 

所得の再分配の徹底ぶり

 フランスで実際に子どもを育てていて驚いたことは数々ありますが、一番は「富の再分配」が隅々まで徹底しているということです。「富の再分配」とは、税や社会保障によって貧富の差を是正して不平等が固定化しないようにすることです。

 

 日本でも累進税率や社会保障による「再分配」があるはずなのですが、よく指摘されるのが、日本は再分配した後に貧困が悪化する唯一の先進国だということ。それじゃあ「再分配」の意味がないではないか!ということになります。フランスや北欧などでは、再分配を通じて子どもの貧困を大幅に減らすことに成功しているのに、日本は税や社会保障を通じて、貧しい子どもを増やしちゃっていることになります。つまり貧乏人からとって金持ちに流しているってことで、いわゆる悪代官状態、完全にディストピアです。。。

http://kodomo-ouen.com/questionnaire/08.html#03

 

 こんな変な状態を解消するためには、所得税の累進性を強化して生活保護などを充実させる程度のことしか以前は考えたことはなかったのですが、フランスで子どもを育てるうち、所得の再分配がより広い場面で表れていることに気が付きました。

 

 例えば、近所の保育園に入れないなどの理由で、ベビーシッターを直接雇用することは非常に一般的です(ベビーシッター制度については機会を改めて)。ベビーシッターの雇用に対しても、所得に応じた補助の役割が大きいのです。ベビーシッターを直接雇用して、3歳未満の子どもを預ける場合、扶養する子どもが1人の家庭で、年収が20,550€(約270万円)以下の場合、毎月467€(約6万円)の援助が受けられます。シングルマザーなどのひとり親の場合には、この額は4割増しです。ただし、この援助には所得の制限はなく、額はかなり低くなりますが、所得の多い家庭にも支給されます。

http://www.caf.fr/allocataires/droits-et-prestations/s-informer-sur-les-aides/petite-enfance/le-complement-de-libre-choix-du-mode-de-garde

 

 保育料の減免措置は、日本でも導入が進んでいるようです。ただ、そもそも待機児童の問題もありますし、働き方によっては保育園に預けることが難しい親もいます。ベビーシッターの雇用についても大胆な援助があることは、待機児童の解消に役立つとともに、雇用を生み出しています。(大きな役割を果たしているベビーシッターの労働条件についてはまたの機会に)

 

 ところで、フランスでは9月と言えば、新学年の開始。新学期の準備で最も慌ただしい時期の一つです。部活動のないフランスの学校。スポーツやアートなどを学ばせたければ、学校の外で習い事をさせなければなりません。そうした課外活動のリサーチや申し込みは、夏休み前の6月ぐらいから活発に行われ、実際の活動はやはり9月に始まります。そこで、また気がついたのはそこでも再分配が機能していること。ある程度公的な性格の施設だと、収入に応じて料金が決まります。もちろん学童保育の料金や給食費もそうなっています。

 

 ここまで徹底しての高い出生率なんだな、と思うわけです。そういう投資が思い切ってできるか。てか、しないと滅びると思うんだけどな、日本。

自己紹介

パリ郊外で日仏の血をひく幼児2人を育てる40代日本人女性です。日本を離れて5年半、妊娠・出産・子育てはもっぱらフランスで経験しました。別にそうしたくてそうなったわけではなく、自分のキャリアへの忸怩たる思いがありつつ、悩みを抱えつつ、こちらで生活しております。

というわけで、時折見かける「外国人の素敵な旦那様と可愛いこどもとこんな素敵な生活をしているのよ、私」系のブログではまったくありません。自分の日常を多く占める子育てに関する話題も出てきますが、あくまで社会批評。

みんなが憧れる「おフランス」の漂白されたフランスではなく、虚飾のないリアルな生活体験に基づく批評をお届けしたいと思います。

もちろん、「フランスはこんなにひどい、やはり日本はスゴイ」のような国粋ブログでもありません。残念ですが、最近の日本は衰退国家の匂いがプンプンしています。外部から見ていて、「日本人として、居ても立ってもいられなくなってきた、何か言いたい!」、というのが、このブログ開設の理由の一つでもあります。

それでは、次回からいろいろ書いていきたいと思います。

よろしくお付き合いくださいませ~~。